それでは、さっきのページで見た話をちょっとだけ数学っぽくしてみましょう。
話自体はものすごく単純なんだけど、「行列ってただ計算するだけのものでしょ?」とか思ってる高校生の人にとっては 楽しめる内容かもね。
説明はしていくから、知らない言葉が出てきてもあわてなくて大丈夫。 それと、式とかけっこう画像にしてあるから、読み込みに時間がかかるかも知れないけどガマンして見てね。
(ただ、行列の計算そのものを忘れちゃったとか、習ってないという人はいったん前の ページに戻って、下の「補講」にある「行列」のページを読んでみるといいかも。)
 
 
Problem.1-2
三次元空間内で物体を鏡に映す操作を表す行列について考察せよ。
 
 
行列・・・
ちょっといきなりな感じもするけどね・・・でも、高校で習う2x2行列を使った一次変換。あれと同じ感覚で 進めていけるから怖がる必要は無いのよ。
というわけで、まずはこの図から。
 
 
図1:平面 z = 0 が鏡になっている空間を考える。(自分は z > 0 の部分からこの空間を見ることにする)
点 ( a, b, c ) が鏡に映ると、点 ( a, b, -c ) にあるように見える。
 
 
点 ( a, b, c ) を点 ( a, b, -c ) に移す変換、というのを考えてみましょう。
とりあえず今後、ベクトルは 縦に書くこともあるけど気にしないでね。そのほうがなにかと便利だから、すぐ慣れるよ。

さて、たとえば  なんていう行列を考えて、これを左から   にかけると、結果は   になるよね。

だけどこれじゃあ、a, b, c の値が変わると変換行列自体の形も変わっちゃう。
今欲しいのは、どんな a, b, c の組が来ても結果が合う行列なんだけど、実は簡単に作ることができて、それは

 という形になるね(実際に計算して確かめてみてね)。
最初のやつだと、a, b, c のどれかが0になるときなんかは困りますけど、これなら大丈夫ですね。
えーそれでは・・・この行列の性質について考えるということで、唐突だけどここで「固有値問題」というものを 考えることにしましょう。
あまりなじみの無い名前かもしれないけど、難しく考えなくても大丈夫。 これは、行列Aがあるときに、あるベクトルxで

 (λは行列ではなくてただの数、 つまり定数倍のことね)という関係を満たすものを探しなさい、というものなのよ。
Aは行列、λはただの数だから、単純にA=λ、とはできないけど・・・
普通の問題でも、「1」があることを暗黙のうちに使うってのはときどきあるよね。
たとえば「3a−a」という式は、3a−1a=(3−1)a=2aのように計算できるね。
行列でこれと似たような働きをするものといえば・・・
単位行列でしたね。えーと、単位行列をEと書くことにして・・・

 だから、  、ってことでいいのかな?
そうだね。
ここで、ちょっと考え方を変えてみて。
もしこの、  に 逆行列があったとすると、それを両辺に左からかけると  になるよね。
(ゼロベクトルには何かけてもゼロベクトルだからね。) この式は、「  」以外の 答えがないことを表しているの。
でもそれじゃあ、何も面白くないでしょ。  なら、 Aやλが何であろうと  になるのは当たり前だからね。
じゃあ、  に逆行列が無いような状態を考えればいいんですね。
そのためには行列式が0になればいいんだったね。

行列   について、  を考えると、  になるね。

この行列式は簡単に計算できて、  。これが0になるんだから、結局 λ=1、−1 ということになるね。
このλを「固有値」というの。あとは、それぞれの固有値を式にあてはめて、答えが合う ベクトルx(これを「固有ベクトル」というのよ)を探せばいいのね。
まずλが1のときの式は、  ですね。
最初でもちょっと触れたけど、この式の左辺を計算すると結果は   になるね。

だから、この式が成り立つためには「- c = c 」、つまり c = 0 が必要なのよ。
裏を返せば a と b はなんでもよくて、あ、もちろん a と b が同時に0になっちゃうと   になっちゃうから、それだとダメだけど・・・
じゃあ、λが1のときの固有ベクトルは、一般的に   の形でゼロベクトルではないもの、ですね。
そうね。このことを、「(この行列の)固有値1に属する固有ベクトルは   である」、のように言うのよ。

じゃあ同じように、固有値−1に属する固有ベクトルを求めてみましょう。
固有値が−1のときの式は、  だから・・・
同じように考えると、固有ベクトルは  になるね。

もちろんさっきと同じで、これがゼロベクトルになると困るから、 c ≠ 0 が必要なのよ。
 
 
・・・
 
 
ところで、対角行列の対角成分には、その固有値が現れるという性質があるの。 まあ、さっきの計算を見るとなんとなく分かるかも知れないけど・・・

だから、  の固有値が1と−1になるというのは 実は計算するまでもなく分かるんだけど、今は練習だから普通にやってみたのよ。
 
 
・・・
 
 
さて、「鏡にものを映す」という操作を表す行列について見てきたけど、最後にここまでの内容に具体的に
どんな意味があるのか、を簡単に見ていくことにしましょう。
 
 
図2:固有値が1のベクトルは、1倍される(変化しない)
 
 
まず、固有値が1のベクトルというのはその行列をかけても何も変化しない、という事になるわね。

言うなれば、  というベクトルは 鏡に映しても何の変化も受けないという事ね。

今考えている三次元空間では、平面 z = 0 が鏡になっているんだったね。つまり  は鏡の面に平行なベクトルで、

鏡に映った状態でも同じに見えるということになるね。鏡の面に平行ということは、自分から見れば上下や左右の方向
(もちろん斜めでもいい)を向いているということだから、鏡に映ったものは上下も左右も 反対にはならないということが式で示せたことになるね。
 
 
図3:固有値が−1のベクトルは、−1倍される(向きが逆になる)
 
 
次に、固有値が−1のベクトル。これは、行列をかけるとちょうど−1倍される、ということはつまり

 というベクトルは 鏡に映すと大きさはそのままで向きが反対になるという事になるわ。

今、考えている空間だと このベクトルは鏡の面に垂直なベクトルだから、これはまさに前のページで出てきたとおり、
鏡に映ったものは奥行きが反対になるという事を示していることになるね。
おお〜、なるほど〜。
というわけで、鏡の話はこれでおしまい。
また次のお話で会いましょう。
ではでは〜、ごきげんよう〜。
 
 
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